体験談(5)

<これまでの経過>

妊娠中、6ヶ月までは特に問題なく過ごしてきたのですが、
7ヶ月の頃に胎児の成長が悪いということで、
かかりつけの産婦人科から大学病院に転院し、いろいろと検査しましたが、問題なし。

 

里帰り出産で、臨月に実家近くの市民病院にまた転院したのですが、待てど暮らせど陣痛来ず。
医者も「胎児が小さいので、出来るだけ長くお腹の中にいた方がいいよ」ということで、
ぎりぎり41週5日まで待ったのですが、さすがに胎盤の機能が低下してきているということで、
陣痛促進剤を使って出産しました。
推定体重2300gはあるはずだったのに、生まれてきたら1892gの低出生体重児でした。

 

特に身体に問題はなかったのですが、
「小さく生まれているので、自宅に戻っても念のため定期的に近くの大きな病院で定期的に診てもらってください」
ということで、自宅に戻ってからまた大学病院に通院することになりました。
そのまま4ヶ月頃までは、飲むのはものすごく下手でしたが、
なんとか口から母乳やミルクを飲んでいました。
ただ、全然体重増えず・・・・。

 

そこで大学病院の先生に、「一日の哺乳量がどれくらいか調べるために、検査入院しましょう」
と言われ、6ヶ月の頃に入院しました。
すると、一日に必要な摂取カロリーの半分しか飲んでいないことが分かり、母乳からミルクへ変更。
それでもカロリーが足りないので、特殊なカロリーの高いミルクへ変更したものの、やはり体重が増えず。

 

「ミルクが嫌いだけど、離乳食を食べるかも」と離乳食も出してもらいましたが
もちろん6ヶ月の赤ちゃんが、体重が増えるほどの量の離乳食を食べられるはずもなく。
また、この検査入院中に、娘の発達に遅れがあることが分かりました。
首がすわらず、手足もほとんど動かさず。

 

そこで、MRIをとったり、甲状腺を調べたり、その時に思いつく検査はすべてやっていただきましたが、
特に異常なし。
もしかしたら、栄養が全然取れていないので、そのことによる発達不良ではないかということになり、
最終手段として、口で出来るだけ飲ませて足りない分だけ経管栄養にしましょう、と経管にしたところ…
ぱったり口から何も受け付けなくなりました。
今まで肌身離さず口に入れていたおしゃぶりでさえ、全く拒否。
2ヶ月間検査入院しましたが、飲まない原因も発達遅れの原因も何も分かりませんでした。

 

1歳になったころ、主治医から摂食リハをしてくれる療育施設を紹介され、月1回通うことになりました。
そこでは定期的(年1回)に口腔外科の先生に食べるところを診てもらい、
その先生の指示によって月1回STが摂食リハをする、という形でした。
が、何年通っても、ほとんど変化なし。
ミルクは一切飲まず、口から食べるのはペースト食を味見程度。

 

「口に過敏があるから」と過敏を取るマッサージなども教えてもらいましたが、
歯磨きは普通に出来る、食べ物でないもの(おもちゃなど)は平気で口に入れる、
食べちゃいけないもの(シールや紙など)は食べちゃう、で親としては過敏があるとも思えず(苦笑)。
リハといっても、指導は主に親に対してで、食べるときの姿勢や食べ物の形状、
どんなスプーンを選べばいいか、スプーンを口に入れる角度はどれくらいか、
口に入れて子供が唇を閉じたらすぐにスプーンを引き抜くこと、などでした。

 

そんな変化のない日々でしたが、ひとつ転機になることがありました。
3歳でロタウイルスにかかって入院し、約1週間絶食・点滴のみの生活になって、回復して退院した時、
娘が生まれて初めて「お腹が空いた」といいました。
そのころからプリンや卵豆腐や茶碗蒸しなどの形態のものを食べられるようになりました。
おかゆやおかずも、「ホット&ソフト」という固形化補助食品を使ってプリン状に固めてやると、
お茶碗1杯くらい食べられるようになりました。
また、飲み物もお茶だったら飲めるようになりました。

 

(ただし、療育施設の指導では、「プリン状の形態はだめ。
ペースト食をお茶碗1杯食べられるような口の筋肉をつけてからでないと、
誤嚥をおこしたり、かまずに丸飲みを覚えてしまう」と言われました。)

これで、このままスムーズに食べられるようになるかと期待した矢先。
ロタにかかった3月、その後の4月は順調に一食お茶碗1杯くらい食べていたのですが、
暑いのが苦手な娘は、気温が20度を越え出す5月には、暑さにやられてまたぱったり何も食べなくなりました・・・。

 

そして、二つ目の転機。
娘は1歳から市の障害児通園施設に通っていたのですが、5歳の頃にそこで摂食相談が行われる
ことになり、昭和大口腔外科の先生が来られ、診ていただく機会がありました。

 

そこで食べる姿を診て頂き、また今までの経過や療育施設の話などをしたところ
「娘さんは嚥下には全く問題ありません。
問題があったら、液体(お茶)が飲めるはずないですから。
機能的には全く問題ないので、今のやり方では、いつまでたっても食べられるようになりませんよ。
娘さんのように精神的な面で食べられないお子さんを診てくださる先生を知っているので、
紹介状を書いてあげます」と言ってくださり、昭和大の田角先生を紹介して頂きました。

 

そこで5歳(もうほぼ6歳になるころ)から田角先生にお世話になっているのですが、
「なんでもっと早くこなかったの?こんな物事を分かる年になってから来ても、
なかなか食べられるようにならないよ~」とお叱りをうけ…(汗)。

 

先生のお名前は少し前からネットなどでお見かけしていたのですが、
ちょうど「行ってみようかな」と思った頃に二人目を妊娠、さらに切迫早産の危険があり安静状態だったので、
当時まだお座りの出来なかった娘をかかえて、電車で片道1時間半以上通院することは考えられなかったのです。

 

田角先生に診て頂くようになってから1年半、注入量を減らしたり、
体重が減りすぎて体力が持たなくなり小学校で動けなくまってしまい、また注入を元の量に戻したり、、
体重が増えてきたのでまた減らしてみたり、とやってきましたが、
今年に入ったあたりから急に口から摂取する量が増えだしました。
去年末まではエンシュアHを一日650cc注入していたのを、年明けから徐々に減らし、
現在は夜中に100ccだけで、体重は激減していますが、体調は崩さずに元気にしています。
口から食べられるものも、2011年末まではほんとにどろどろのおかゆとプリンの形態の物だけだったのに、
2012年3月頃から急に食パンをむしゃむしゃ食べだし、もうびっくり!

 

今はサンドイッチ用のパン2枚の間にジャムを挟んだものが彼女の主食で、これを一食に全部食べ、
またおやつの時間にはロールケーキやバームクーヘン、どら焼きなどをちょこちょこっと食べています。
飲み物は、あんなに大好きだったお茶を一切飲まなくなり、今は午後の紅茶かコーヒー牛乳ばかり。
まあ、お茶よりカロリー摂取出来るからいいか~、と呑気な母です。

 

娘は低血糖になりやすい体質で(ケトン性低血糖症)、先生は本当は夜の注入もなしにしてしまいたいそうですが、
それをすると翌朝低血糖で嘔吐、意識障害寸前まで行ってしまいます。
しばらくは完全に経管卒業は無理ですが、7年以上変化のなかった娘がここ3ヶ月で劇的な変化を遂げて、
精神的にも肉体的にも楽になりました。

 

嚥下には問題ないのですが、現在まだ咀嚼がほとんど出来ないので、食べられるものが限られています。
これからは、食べられる固さを広げていくのが課題かな~、というところです。

 

<親の気持ち>

私はめんどくさがりなので、娘が鼻チューブなのも「ご飯用意しなくて楽~」とか
「お金かからなくていいわ~」とか思っちゃうタイプです。
この性格が、積極的に娘の摂食障害を診ていただける先生を探そうという行動に出なかった
一番の原因でしょう・・・。

 

逆に、超偏食で全然背が伸びない幼稚園の息子のほうが、「何食べさせたら背が伸びるだろうか」
「何を作ったら食べてくれるだろうか」で毎日一日中食事のことばかり考えている状態で、
そちらの方がかなりのストレスです。

 

私がもうちょっと積極的に、「こうやったら食べるかしら?」「こういう先生に診てもらったほうがいいかしら?」
と動いていたら、娘ももっと早く食べられるようになったかも。
でも、3歳までは食事よりも、寝たきりの状態からどれだけ動けるようになるかのほうが私の中では優先で、
PTやOTのリハビリの方がメインでした。
摂食については、「体が動かせるようになったらおなかも空くようになって、食べられるようになるかもしれない」
と言われていたこともあり、まず体を作ることだと思っていました。
当時娘は身障1級、療育A1、書類上は最重度障害児でした。
PTからも、「将来的にお座りまででしょう」と言われていました。

 

お友達はみな重度の障害のあるお子さんばかりで、経管・気管切開・胃ろうがある子ばかり。
娘についても「重度の心身障害児なのだから、経管くらいあっても仕方ないのだろう」という気持ちもありました。
そうすると、親としてはうれしい誤算なのですが、娘がちょうど3歳になった頃、下の子が生まれ、
赤ちゃん大好きな娘はベビーベッドに寝ている弟を見たい思い一心で、
ベビーベッドに手をついて初めてつかまり膝立ちが出来るようになりました。

 

その後つかまり立ちが出来るようになり、4歳7ヶ月には歩けるようになりました。
そうなると身障手帳はなくなり、他に病気はない為、手帳は療育のみ。
お勉強的なことはあまり出来ないのですが、おしゃべりが上手な為、療育手帳もA2になりました。
今まで私は娘のことを「重度心身障害児」だと思って、手をかけて甘やかして大事に大事にしてきたのに、
気がつくと「あれ?中度の知的障害児?」となっていました。

 

そこからやっと摂食に本腰を入れる感じになったのですが、
今まで動けなかったので「あれ取って」「あれやりたい」「あれ見たい」という要求に全部答えてきてしまっていたし、
食事は、療育施設では「お母さんが食べさせて下さい」と指導されてきましたので、
超わがまま娘が出来あがってしまっていて、昭和大を受診した際には先生に
「手をかけて育てすぎ!」と言われてしまいました・・・。

 

<就学について>

娘は2012年現在7歳、小学2年生です。
精神運動発達遅滞で、歩けるようになったのが4歳7ヶ月頃、知的面は今現在で3歳くらい。
小学校の特別支援学級に通っています。

1年生までは給食時間に注入していたので、私は毎日学校へ注入しに行っていました。
うちの市で医療ケアのある子が普通の小学校に入学したのは初めてだそう。
私と私の娘が、後に続く経管のお子さんの道を切り開いたのだ!と勝手に思っています(笑)。

 

うちの市で今までに経管のあるお子さんは重度のお子さんばかりだったので、
皆さん肢体不自由の養護学校に入学していました。
うちも教育委員会の担当者には「医療ケアがあるなら、看護師常駐の養護学校へ」と勧められましたが、
見学に行っても皆さん寝てる状態や座位保持に座ってる状態。
その中にうちの娘のようなお転婆娘を放り込んだら、みんなをふんづけ、上に乗って、他のお子さんに迷惑がかかります。
知的の養護学校も考えましたが、そちらは看護師はおらず、
注入があると私が毎日片道車で40分以上かけていかねばなりません。
また、給食も「ペースト食はできるが、中間(刻み食ややわらか食)は出来ない」と言われました。
それならば、徒歩5分のところにある地元の小学校の支援級なら、毎日注入に行くのも負担がないし、
どうせ給食時間に行かねばならないのだったら、家で彼女の食形態にあう物を作って持っていける、
と思って、地元の小学校を入学希望しました。

 

後は、市の就学相談委員会の面談でしょうか。
その面談では小児科の先生やら養護学校の先生らが来ているのですが、
面談の部屋に一人でちゃんと歩いて行って、椅子に座って、緊張するでもなく
「あー、喉乾いた。ママ、お茶ちょうだい」と言った娘を見て、
そこにいた先生方が「この子は養護学校じゃないでしょう。普通の小学校で十分いけますよ」と言ってくださり、
無事、地元の小学校への入学が決まりました。

 

<チューブへの依存について>

依存はかなりあると思います。
お腹がすくと「チューブつけて~」と注入の催促をします。
でも娘は6ヶ月の頃に発達の遅れが見え始めてきて、その原因として「きちんと栄養が取れていないこと」
が 考えられたので、とりあえずはこれ以上身体的精神的発達の遅れを広げない為に、なんとか栄養を取る必要があったのです。

 

結局、栄養を取っても発達の遅れは広がるばかりでしたが、
もしかしたらあの時経管をしていなくて十分な栄養が取れていなかったら、
もっと遅れていたかもしれない、と思ったりもします。
私自身むちゃくちゃ偏食で、よく母親に「昔だったから経管なんてなかったけど、
あんたが今の時代に生まれていたら、絶対経管になっていたはずだ」と言われるくらいにミルクを飲まない子でした。

 

もちろん幼稚園の息子も少食で、彼も赤ちゃんの時ミルクの飲みが悪く、
病院で1週間の哺乳量をチェックしましたが、一日の平均量があと50cc少なかったら経管になっているところでした。
ぎりぎりのところでなんとか乗り越えました。
下の子は今でも偏食ではありますが、量はそこそこ食べていると思います。
ただ、赤ちゃんの時期(3~8ヶ月頃)のミルクの飲みが悪く、背も体重も増えなかったことが原因なのか、
未だにかなり体が小さいです。
4歳なのに見た目は2歳です。
娘の摂食障害、息子の偏食は私の遺伝のような気がします。

 

受診については、昭和大の田角先生は、「2~3歳までに受診してほしい」とおっしゃっていました。
うちの子のように5歳になってからでは、「自分が食べたいから食べる」んではなくて、
「食べたら大人が喜ぶから」とか「食べなかったら大人が自分の方に気を向けてくれるから」
というのが分かってしまっているので、なかなか難しいそうです。
でも、通えるところに専門医がいないと、難しいですよね…。
うちも受診が遅れた原因の一つは、昭和大まで電車で1時間半以上かかるところです。
娘一人ならいいのですが、下の子が幼稚園に入るまでは、なかなか遠くの病院に通うのが難しかったのです。
知識をもった小児科の先生がどんどん増えて、近くで診て頂ける場所が出来るのが一番良いのですが。

 

ちなみに、障害児通園施設の摂食相談時の昭和大口腔外科の先生の話ですが、
「注入を減らしたり抜いたりする目安は、体重12キロを超えてから」だと言われました。
12キロまでは、とりあえず注入で栄養を取ると割り切って、口からは少量でいいから、
形態をちょっとずつ粒のあるものや固いものを食べられるように練習しましょう、
そしていろんな味に慣れさせましょう、と言われました。
それまで摂食指導を受けていた療育施設では、
「ペースト食をお茶碗1杯食べられる程度の口の筋肉をつけてからでないと、次の形態にあげてはいけません。」
と言われていたので、同じ歯科の先生でもえらく違うもんだな、と思いました。