医療福祉関係者の方へ 弘中 祥司

摂食嚥下障害は早期介入が有効

摂食嚥下障害というと、高齢者の障害といったイメージがあるかもしれません。確かに、超高齢社会の到来に伴い、高齢者の摂食嚥下障害患者は増加しています。しかし、乳幼児にも摂食嚥下障害は存在し、高齢者に比較すると数は少ないですが、その障害像は多様であり、障害の程度も重度であることが多いです。また、社会的な受け皿も少ないのが現状です。

乳幼児の摂食嚥下障害を引き起こす疾患

乳幼児の摂食嚥下障害を引き起こす疾患には、次のような疾患があります。

分類 代表的な疾患
1 未熟性:超低出生体重児など
2 解剖学的な構造異常:唇顎口蓋裂、小顎症、食道閉鎖症など
3 中枢神経、末梢神経、筋障害:脳性麻痺、筋ジストロフィー、ミオパチーなど
4 咽頭・食道機能障害:アカラシア、食道炎など
5 全身状態:感染症、心疾患、呼吸器疾患など
6 精神・心理的問題:経管栄養依存症、反芻など
7 その他の問題:口腔乾燥、口内炎など

乳幼児の摂食嚥下障害への対応

乳幼児の摂食機能障害に対しては、摂食機能を評価した後に、摂食機能療法を行います。摂食機能療法には、①食環境指導(姿勢や食具の調整など)、②食内容指導(食形態の指導など)、③摂食機能訓練(嚥下訓練、咀嚼訓練など)の3つがあります。
もし、関係しているお子さんが摂食嚥下障害でお困りの場合、小児の摂食嚥下障害を扱っている、医療機関に相談してみてください。しかし、まだまだそのような医療機関は十分ではありませんので、かかりつけの小児科や歯科、保健所や療育施設に相談されてみると、摂食嚥下障害を診てくれる施設に繋がるのではないかと思います。
ただ、摂食嚥下障害は早期介入が有効であるといわれていますので、低年齢のうちに一度診てもらうことをお勧めします。

つばめの会顧問 弘中 祥司

(昭和大学歯学部スペシャルニーズ口腔医学講座 口腔衛生学部門 教授 )

略歴

1994年 北海道大学歯学部歯学科卒業
2001年 昭和大学歯学部口腔衛生学教室 助手
2006年 昭和大学歯学部口腔衛生学教室 准教授
2013年 昭和大学歯学部スペシャルニーズ口腔医学講座 口腔衛生学部門 教授
2013年 昭和大学口腔ケアセンター長(兼任)、昭和大学歯科病院スペシャルニーズ歯科センター長(兼任)、日本障害者歯科学会理事長、国際障害者歯科学会(iADH)前理事長、 日本摂食嚥下リハビリテーション学会理事、日本歯科医学会理事、日本小児歯科学会理事

著書

・才藤栄一・植田耕一郎監,出江紳一・鎌倉やよい・熊倉勇美・弘中祥司・藤 島一郎・松尾浩一郎・山田好秋編:摂食嚥下リハビリテーション 第3版.医歯薬出版,2016
・日本摂食嚥下リハビリテーション学会医療検討委員会:発達期摂食嚥下障害児(者)のための嚥下調整食分類 2018.日摂食嚥下リハ会誌 22(1):59–73, 2018