活動報告

ダウン症のお子さんの指導について(顧問より寄稿)

ダウン症のお子さんの保護者・および対応する医療福祉関係者に向けて、つばめの会顧問のおひとりである綾野理加先生にご寄稿をいただきました。適切な対応が多くのお子さんの将来を変えていきます。ダウン症のお子さんの診察やご支援をされる方はぜひご一読くださいますようお願いいたします。

 (改行位置および文字の強調等は当会にてウェブ掲載のために変更しております。ご了承ください)

ダウン症のお子さんの摂食指導で思うこと

昭和大学小児成育歯科学講座 綾野理加

 現在7箇所の医療機関で小児の摂食嚥下外来を担当しています。様々な先天性の疾患があり、食べること、飲み込むことに悩むお子さんと保護者にお会いしてきました。 全身状態が安定し、口から食べることができる条件が揃っているのならできるだけ早い時期に食べる練習を始めていただくと助かるなあと思う今日このごろです。

 摂食機能(食べる機能)は、発達、獲得します。獲得するのは離乳食を食べながら、食物の感触を口で感じて動いて繰り返し学習していく、初期食で口を閉じて飲み込む呼吸路と食物路の使い分けを覚え、中期食で舌先と上あご前方で押しつぶすことを覚えながら食物の固さの見極め方を覚え、後期食で歯ぐきでかみつぶし、歯ぐきからこぼれないよう舌とほっぺではさみながら顎を動かしかみつぶす動きを覚えていきます。

 離乳食は5−6ヶ月頃に始めようとおすすめされることが多いと思います。
授乳離乳の支援ガイドによれば、“開始時期の子どもの発達状況の目安としては、首のすわりがしっかりして寝返りができ、5秒以上座れる、スプーンなどを口に入れても舌で押し出すことが少なくなる(哺乳反射(赤ちゃんにしかない哺乳動作を賄う反射)の減弱)、食べ物に興味を示すなどがあげられる。その時期は生後5~6か月頃が適当である。ただし、子どもの発育及び発達には個人差があるので、月齢はあくまでも目安であり、子どもの様子をよく観察しながら、親が子どもの「食べたがっているサイン」に気がつくように進められる支援が重要である。 ”とあります。

 ダウン症は、21番染色体が1本多く存在することで起こる疾患です。700人から1000人に一人の発生頻度と言われます。心疾患や消化器疾患、発達がゆっくりなことなどから離乳食開始がゆっくりであるように思います。

離乳開始のサインが上記のようにあるのは、口を閉じて飲み込むことができることが誤嚥や窒息を防ぐ大切な動作であり、それを身につけるためには姿勢の安定が大切であること、哺乳反射が残っていると舌で食物を口の外へ押し出すなど、食物の食感を感じて動かし食べる機能を覚えていくことが難しい、そして大人が熱心に離乳食を与えてもお子さんが食べ物に興味がなければ食事を進めるのは難しいと考えられる、だからと思います。この条件が整うのが5−6ヶ月以降のお子さんも少なくないでしょう。

ただ、離乳食開始をゆっくりにしてその間に食べるための口の使い方の適切な指導がなされなかったためか、口を閉じることが難しいので、大人が口の奥に入れる、舌が出てこぼれてしまって食べさせにくい、食べ物の固さに応じた口の動きを身につける前に月齢を目安に食物の形状を固くしている、その結果丸のみしている、といったお子さんにこのところお会いする機会がありました。 

ダウン症のお顔立ちの特徴としては上あごが小さいことがあげられます。
また、全身筋の低緊張ということがあるからか、舌を口にしまって口を閉じることが苦手、また鼻呼吸が苦手、よって舌を口の中にしまって飲み込むことが苦手なお子さんが多いように思います。初診のときの主訴が、丸のみ、とおっしゃる保護者も多いように感じます。

拝見すると口の動きを順を追って獲得することがなく、月齢に応じた食事を食べていること、また、かたいものを食べないから噛めないのだという考えのもと、硬い食事を与えていることがあります。
硬いものを噛まないからと硬いものを与えても、食べる動きを知らなければ噛んで食べることは難しく、結果丸のみを助長することもあるのです。

 離乳食を開始するには先程あげたように条件があります。その条件が整うのに時間がかかるお子さんがいらっしゃるのも事実です。食べることは全身状態が安定しないと逆に健康を蝕むことさえあるからです。

 ただし、食事を食べなくても口の使い方を覚えていく方法があります。摂食機能療法(食べること飲み込むことを身に着けていく治療法)の中の間接訓練、という方法です。間接訓練は食べ物を使わずに食べる動きや飲み込むことを身に着けていく方法を指し、目的によっていくつかの方法があります。

ダウン症のお子さんでは、舌が出て丸のみしないよう口を閉じることを行いたいです。鼻呼吸できていることが条件ですが、口を閉じて舌を口の中にしまっておく練習を早くから行いたいです。口を閉じることを知らずに舌を出しながら食べることがながければ、それが癖のようになってしまうことがあるからです。

口を閉じることができるようになったら、舌を口の中にしまっておいて舌先を上顎の前方に向かって押し上げるといった方法を行っていくこともあります。いずれも専門家に評価してもらった上で必要な方法を指導してもらうことが望まれます。素人判断は逆に機能獲得を妨げることもございます。

 離乳食を食べることで食べる機能を獲得していくわけですが、離乳食開始を待っている間にも口の使い方を覚えていく方法があること、お子さんによっては月齢をものさしにした離乳食の進め方ではなく、口の動きを指標に、ということを知っていただけると、癖がつくまえに美味しい食べ方を身に着けていきやすいように思っています。

美味しい食べ方とは身体の仕組みを使った食べ方です。それは離乳食を順に食べることで、飲み込む、取り込む、おしつぶす、かみつぶす、といった食べる動きを身に着けていくことです。

 ダウン症は筋の低緊張ということがありますから、丸のみを覚えてしまってそれを生涯の食べ方にすると、高齢になってから、いえ、高齢になる前から窒息のリスクが有るように思います。
楽しく食べることで苦しい怖い思いをするなんて悲しいです。

食べ物が口からなくなれば食べることができている、と思いがちですが、そうではないこと、食べる仕組みも知っていただけたら嬉しいです。

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